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肝臓

5)肝臓
・肝臓は人体最大の実質臓器。やわらかく血液に富む。
・腹腔の右上部、横隔膜の真下に位置する。
・成人男性で重さ約1200g、女性では約1000g
・肝鎌状間膜によって右葉・左葉に分かれる。また、血管支配に基づいて分けることもできる。
・肝臓には門脈・動脈・胆管などが走行しておりこれを門脈域と呼ぶ。
・肝臓の細胞間には細胆管が開いており、肝細胞でつくられた胆汁はこの細胆管から流れ肝外に出ていく。
・肝臓の血管の特徴は、流れ込む血管が2本あり、出ていく血管が1本であることである。
・流れ込む血管は肝動脈と門脈である。
・肝動脈は肝臓の栄養血管として腹腔動脈から分岐した動脈のこと。
・門脈から胃・腸・膵臓・脾臓からの栄養分の多い静脈血を引き込んでいる。
・肝動脈と門脈はいずれも肝門部から肝内に入り、ほとんど併走して門脈域を流れる。
・肝動脈は動脈血、門脈は静脈血が流れる。
・肝臓では栄養物や一部の不要物を取り込んで、栄養物を貯蔵したり、身体に必要な成分に代謝する一方、 不要物を解毒したり、胆汁中に排泄する機構を持っている。
・胃、小腸、大腸からの血流は門脈を介して肝臓に運ばれる。(吸収された栄養物や経口薬剤を含む)
・ブドウ糖をグリコーゲンに変化させ貯蔵する。
・脂肪やたんぱく質の代謝も行う。
・たんぱく質(特にアルブミン・凝固因子)を産出する。
・アルブミンは糖質浸透圧の主要なたんぱく質である。
・アルブミンが少ないと血管外に水分が貯留する→腹水→門脈圧上昇。
・血液凝固因子が減少すると出血傾向になり、アンモニアが処理できなくなる→肝性脳症(肝性昏睡)→芳 香族アミノ酸上昇。
・アンモニアは腸内細菌が産出。
・胆汁は胆汁酸とビリルビンから成り立つ。
・ビリルビンは老赤血球が脾臓で破壊されて出てきたヘモグロビンに由来する。
・ヘモグロビンは非水溶性のビリルビンになり、アルブミンにより肝臓に運ばれ、肝細胞内でグルクロン酸 抱合され水溶性のビリルビンになり肝細胞から排出される。
・正常ビリルビン値は1.0mg/dl以下。
・腸管に出たビリルビンは腸内細胞によって還元され、ウロビリンとなり殆どが便に排出され、便の褐色色 素はこれに由来する。
・便は胆汁が混じらないと便は白色である。
・胆汁酸はコレステロールを原料にしてつくられる。
・胆汁産出するシステム
1.肝細胞において胆汁酸がつくられる。
2.胆汁酸は胆汁内に流され、小腸では脂肪・脂溶性ビタミンが吸収され、胆汁は約95%が回腸末端で   再吸収され、門脈を介し肝臓で再利用される。
3.残りの約5%が結腸で再吸収され、門脈を介し肝臓で再利用される。
・肝細胞が破壊されると…GOT・GPT・LDHが肝細胞から血中に逸脱する。
**肝機能低下すると…アンモニア値が上昇する。アルブミン値が低下する。プロトロンビン時間が低下(延長)する。ビリルビン値が上昇する。
・老廃物は胆汁に溶け込んで肝臓から十二指腸に排出される。
・脂溶性ビタミンは胆汁が出ていないと吸収されない。
①肝性脳症
・軽い内は気分の変動やだらしない態度。
・外界の刺激に応じられなくなったり、眠ったような嗜眠状態になり、ついには意識が完全に消失する。
・進行すると記銘力低下、矢見当識。(自分のおかれた立場がわからない)
・重篤になると昏睡に陥る。
・羽ばたき振戦・腱反射異常・筋緊張亢進などの精神経症状をきたす。
・治療はアンモニアの生産を抑制する。
・食事中の蛋白制限、便通改善。
・分岐鎖(分枝鎖)アミノ酸製剤を投与する。
②肝炎
・肝炎とは肝臓に炎症が起こった状態で、赤く腫れて熱を持ち触ると痛みを感じる。
・肝炎を起こす原因としてウイルス、薬剤、アルコール、自己免疫疾患、アレルギー等がある。
・日本人の肝炎の約80%が、肝炎ウイルスが原因。
・肝炎ウイルスにはA・B・C・D・E・G型などがある。
・日本人に多いウイルス性肝炎はA・B・C型の3種類
・経過により急性肝炎、慢性肝炎、劇症肝炎の3つに分類できる。
・突然的に発症し一過性のものを急性肝炎、6ヶ月以上症状のおさまらないものを慢性肝炎、急性肝炎のう ち特殊なもので1週間から10日で死に至ることが多いものを劇症肝炎という。
・肝臓病の中で一番多いのは慢性肝炎で、一部は肝硬変へ進むことがある。
③A型肝炎
・A型肝炎ウイルスによって起こる肝炎で、日本で起こる急性肝炎の約40%がA型肝炎。
・感染力が強い。
・汚染された飲み水や魚介類を摂取することで経口感染する。
・衛生状態の悪い地域の生水・生物に注意する。
・小児や若者に多い。(高齢者は抗体を獲得している可能性がある)
・症状は一過性で、慢性肝炎に移行することはなく、劇症肝炎になることもまれで、A型肝炎は1度かかる と永久免疫ができ、再感染することがないことが特徴である。
・2~6週間の潜伏期を経て発症。高熱、全身倦怠感、下痢、食欲不振など風邪に似た症状が現れ約1ヶ月 で完治する。
・ワクチンにより予防できる。
④B型肝炎
・B型肝炎ウイルスによって起こる肝炎で劇症化しやすい。
・B型肝炎ウイルスに汚染された血液が皮膚の傷口等から体内に入り込むことによって感染する。
・出産時の母子感染、輸血、刺青や覚醒剤、性交渉、医療従事者の針事故により感染する。
・再感染のない一過性感染と慢性化の恐れのある持続性感染がある。
・一過性感染とは、B型肝炎ウイルスに感染すると、1~6ヶ月間の潜伏期間を経て急性肝炎を発症。
・健康な成人がはじめてB型肝炎ウイルスに感染した場合はほとんどが一過性感染。
・黄疸の数%に劇症化するものがある。
・免疫機構が未熟な幼少期にB型肝炎ウイルスに感染すると、ウイルスを異物と認識できず肝炎はおこら ないがウイルスも排除されず体内にウイルスを保有した状態、持続感染となる。このように体内にウイル スを保有してしまう人をキャリアと呼ぶ。
・幼少期の無症候期を経て、10~30代の間に肝炎が起こり約10%の人が慢性肝炎へと移行する。
・HBワクチンにより予防できる。
・治療は安静を保つ。
・治療薬は大きく分けて2つ。
1.肝炎ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス剤(インターフェロン)
2.肝臓の炎症を抑える肝庇護薬
・ステロイド剤の投与を突然中止して炎症を悪化させるリバウンド現象を利用した、ステロイド離脱療法が ある。
・慢性肝炎では、肝硬変へ移行するのを食止め慢性肝炎の段階で治癒することが目標となる。
⑤C型肝炎
・C型肝炎ウイルスによって起こる肝炎で、B型肝炎ウイルス同様、血液を介して感染する。
・C型肝炎ウイルスは感染力が弱く単に血液に触れたぐらいでは感染しない。そのため、母子感染や性交渉 による感染も極めて少なく、日常生活で移ることはほとんどなく大部分が輸血・血液製剤・刺青や覚醒・ 同性愛者によるものである。
・成人になってから感染すると治りにくく、7~8割の人が慢性化する。
・他の肝炎より症状が軽いのが特徴で、発症しても気が付かずに治癒していたり、検診などで慢性肝炎とし て見つかることがよくある。
・C型肝炎に感染すると、2~16週の潜伏期間を経て、発熱、頭痛、食欲不振、関節痛など急性肝炎の症  状が現れる。
・一般的には慢性肝炎や初期肝硬変では自覚症状が乏しいため、進行した肝硬変となってはじめて全身倦怠 感や疲れやすいといった症状が現れる。
・慢性化する確率が非常に高い肝炎で、7割ぐらいの人が慢性肝炎へと移行する。
・治療の基本はインターフェロン療法。
・C型肝炎のワクチンは無い。
⑥肝硬変
・肝細胞の変性、壊死に対応する再生が反復することで肝臓に繊維化がおこる。
・肝炎やアルコールが原因で肝臓の細胞が破壊されつづけると、再生能力の高い肝臓といえども限界が訪れ る。肝臓の中に線維が増えて固くなり、見た目にもゴツゴツとしたこぶだらけの臓器になる。この状態を 肝硬変といいう。 肝硬変になると、肝臓内部の血液循環に異常が生じ、肝臓の働きが果たせなくなる。
・肝臓が固くなることで肝臓へ血液が流れにくくなる。
・慢性肝疾患の終末像。
・90%が肝炎ウイルスの慢性肝炎からの進展によるもので、圧倒的に多いのはC型肝炎で肝炎ウイルス。
・肝炎ウイルスの他の原因としてアルコールがあげられる。
・肝硬変の重傷度の指標としてチャイルドビューがある。
・血清ビリルビンが上昇する。
・血清アルブミンが低下する。
・腹水が増加する。
・精神神経症状を発症する。
・プロトロンビン時間が低下(延長)する。
・症状に①手掌紅斑②クモ状血管種③末梢血管拡張④女性化乳房などがある。
・肝硬変は1度発症すると元に戻れない。治療は患者さんのQOL(生活の質)を維持し、肝硬変の進行を 食止めることを目的として行われる。
・治療は安静療法と食事療法がある。
・食事療法は原則として高蛋白食、ただし腹水高度、脳症がある場合は蛋白質制限をする。
・代表的な合併症には腹水、食道静脈瘤、肝性脳症、痔がある。
・腹水の治療として塩分の制限、利尿剤の投与、アルブミン製剤の投与を行う。
・肝性脳症の治療として分岐鎖(分枝鎖)アミノ酸製剤を投与する。
・肝硬変→門脈圧亢進→食道静脈瘤・腹水(アルブミン↑)
・食道静脈瘤とは…門脈から食道へ行く血液が多くなり、血管の怒張が見られること。胎児の頃に使用していた腹壁静脈も怒張する。
・食道静脈瘤の治療
・SBチューブによる圧迫止血。
・食道静脈瘤硬化療法…患部に硬化剤を注入して静脈瘤を固める。
・食道静脈瘤結紮(けっさつ)術…静脈瘤を輪ゴムでしばり血流をとめる。
⑦劇症肝炎
・急激、広範囲に起こる肝細胞の壊死に基づく肝機能不全。
・急性肝炎の中で約1%の方が劇症肝炎になるといわれる。
・最初の症状が出てから8週間以内に肝性脳症が出て、なおかつプロトロンビン時間が40%以下になると 劇症肝炎と診断。
☆プロトロンビン時間とは…肝機能をみる指標の一つで健康な人を100%とする。
☆肝性脳症…羽ばたき振戦・腱反射異常・筋緊張亢進などの精神経症状をきたす。
・意識障害、出血傾向にあり、脳浮腫・感染症・消化管出血・腎障害等の重い合併症を引き起こす。
・多臓器不全の病態を示し、予後は不良。(生存率は30%)
・治療は、救命を目的とした全身的なものになる。ICUに準じた施設への収容が望まれる。
・劇症肝炎は、肝臓病の中でも死亡率がきわめて高く70~80%の人が死亡する。
⑧脂肪肝
・肝細胞の内部に脂肪が貯まる。
・原因は①肥満(過剰栄養)②糖尿病③アルコールの多飲④ステロイドの長期投与⑤栄養障害⑥タンパク合 成障害⑦妊娠⑧ライ症候群⑨慢性感染症などがあげられる。
・治療は食生活の改善を行う。
・アルコールの多飲…脂肪肝→肝硬変へ移行する。
⑨肝癌
**肝癌は、原発性肝癌と転移性肝癌に分けられる。
・原発性肝癌は、肝細胞癌と胆管細胞癌に分けられる。
・移転性肝癌とは胃癌や大腸癌などの癌細胞が血液を介することで肝臓に移転してきたもののことをいう。
・移転性肝がんは治療が難しく命に関わることがある。
・肝切除の対象となる疾患の大部分は大腸癌である。
・肝臓癌の90%以上は肝細胞癌。肝細胞癌は正常な肝臓に発生することはまれでB型肝炎・C型肝炎・肝 硬変などの慢性肝疾患の人に発生するケースがほとんどである。
☆肝細胞癌
・肝細胞癌は原発性肝癌で最も多い癌である。
・50~60歳代の男性に多い。
・肝硬変に合併することが多い。
・現在では70~80%にC型肝炎ウイルスの関与が認められる。
・自覚症状は肝硬変に見られる症状、全身倦怠感、腹水、黄疸など。
・70%の肝細胞癌で血液検査においてAFP、PIVKA-Ⅱが異常高値となる。
・AFP、PIVKA-Ⅱは腫瘍マーカーと呼ばれる。
☆腫瘍マーカーとは?
癌には多くの種類があるが、中には腫瘍マーカーと呼ばれるその癌に特徴的な物質を産生するものがある。そのような物質のうち、体液中(主として血液中)で測定可能なものが、いわゆる「腫瘍マーカー」として臨床検査の場で使用する。
腫瘍マーカーは、進行した癌の動態を把握するのに使われているのが現状で、早期診断に使えるという意味で確立されたものは存在しない。癌の動態を把握するとは、治療効果を判定するという意味で、例えば進行した癌に対して化学療法や放射線療法が行われている場合、その治療がどれくらい効果があるかを判断することに腫瘍マーカーが使われる。
・肝臓癌の診断には肝機能検査(腫瘍マーカー)、画像検査(体部CT、超音波検査MRI、肝血管造影)などがある。
・超音波検査は無侵襲だが、肺など空気の多い場所は写りにくい。
・MRI検査は脳や脊椎検査に優れている。磁場が発生するので金属片に注意しなければならない。
・肝血管造影では拡張した腫瘍血管像、濃染した腫瘍像、肝動脈と門脈、肝静脈とのシャント像が見られる。
・治療は肝機能が良好であれば肝切除術を第一に考慮する。
・肝切除後の残存肝の予備機能を考慮して切除適応の是非や切除範囲を決定する。
・肝切除術の他に経皮的ラジオ派熱灼療法(RFA)、マイクロウェーブ凝固壊死療法(MCT)、経皮的エタノール注入療法、塞栓療法(TAE)、肝移植が行われる。
・経皮的ラジオ派熱灼療法(RFA)、マイクロウェーブ凝固壊死療法(MCT)、経皮的エタノール注入療法は局所の麻酔で治療が行え、入院は2日程である。
・肺細胞癌は栄養血管として肝動脈支配が優位であるため、動脈塞栓物質で遮断し、腫瘍の縮小あるいは消失をはかるものである。
・肝移植は脳死患者より全肝を移植する全肝移植と、血縁者の部分肝を移植する生体部分肝移植がある。
・日本では生体部分肝移植が多い。
⑩芳香族アミノ酸と分岐鎖アミノ酸の違い
・芳香族アミノ酸…芳香環を有するフェニルアラニン、トリプトファン、チロシンなどのアミノ酸をまとめて芳香族アミノ酸という。これらの芳香族アミノ酸はたんぱく質の構成成分として用いられるだけでなく、ホルモンや各種アミンなどをカラダの中でつくるのにも使われる。
血中に増加した芳香族アミノ酸が偽性神経伝達物質の合成に関与し、正常な神経伝達であるドー パミンやノルアドレナリンに代わって作用するために肝性脳症が出現する。つまり、芳香族アミノ酸が増加することによって、肝性脳症を引き起こす。芳香族アミノ酸であるフェニルアラニンとチロシンの代謝部位は肝臓であり、その血漿中濃度は肝細胞機能に依存する。
・分岐鎖アミノ酸…3つのアミノ酸はともに分岐鎖アミノ酸と呼ばれる。カラダのたんぱく質を増やす働きや、運動時のエネルギー源として重要な役割を果たす。
肝性脳症を治療するために、分枝鎖アミノ酸を投与する。

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