消化器・外科
消化器外科
1)食道
①食道癌
・好発部位は胸部中部食道。
・食道癌は男性に多い。
・危険因子は喫煙・飲酒・熱いものの飲食などがある。
・食道癌の90%は扁平上皮癌である。
・他臓器転移は肺・胸膜・リンパ節・肝臓など
・自覚症状は嚥下困難。
・検査は食道造影・ルゴール染色・生検・細胞診などを行う。
・食道癌の治療は手術療法・化学療法・放射線療法が基本。
・食道癌には放射線が有効。
・胸部食道癌の手術は開胸、開腹を行う。
・食道癌の再建臓器としては胃・結腸などが利用されることが多い。
・再建経路
胸壁後:再建距離が長い。縫合不全の危険性は少ない。縦隔中再発でも食物通過が可能。外見上の問題がある。
胸骨前:再建距離は胸壁後より短い。縫合不全の処置が困難。心臓や肺を圧迫。再建臓器の圧迫壊死がありうる。
後縦隔:再建距離が最も短い。縫合不全は最も少ない。食物の通過が最も良好。縫合不全の処置が最も困難。
・術式は食道切除術、リンパ節郭清などが行われる。
・術後合併症として縫合不全や嗄声などがある。
②食道・胃静脈瘤
・肝硬変(70~80%)などの基礎疾患を背景として、門脈圧の亢進がみられる。
・特発性や塞栓が原因の場合もある。
・診断は血液検査を行う。
・治療はS-Bチューブによる圧迫止血を行う。
・外科手術…ハッサブ法
・内科的治療…食道静脈瘤硬化療法(EIS)、静脈瘤結紮術(EVL)、IVR
2)胃
①胃・十二指潰瘍(消化性潰瘍)
・好発部位
胃潰瘍ー小弯側、胃角
十二指腸潰瘍ー前壁
・好発年齢層
胃潰瘍ー20~50歳代の男性。
十二指腸潰瘍ー20~30歳代の男性。
・潰瘍の90%にヘリコバクター・ピロリ菌陽性。
・症状…心窩部痛
胃潰瘍ー食後の腹痛
十二指腸潰瘍ー空腹時の上腹部痛。
・治療は内科的治療と外科治療。
・内科的治療方針は、攻撃因子(胃酸)を低下、防御因子(粘液)を増強させる。
・薬物療法ではH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬など胃酸分泌抑制薬を投与する。
・外科的治療には幽門側胃切除術、大網充填術などがある。
・合併症として出血・穿孔・幽門狭窄などがある。
②胃癌
・日本の胃癌の頻度は世界的にも多く、胃癌多発国。
・胃癌は50歳代の男性に多い。
・組織型ではほとんどが腺癌である。
・好発部位は幽門前庭部、胃体部、胃上部の順に多く発生。
・分類
早期胃癌ー粘膜下層のもの。リンパ節転移の有無を問わない。
進行胃癌ー固有筋層以下に浸潤しているもの。
・症状は早期胃癌は無症状のことがある。
・検査は上部消化管透視、上部消化管内視鏡、エコー、CT、MRI
・進展により、上腹部痛、悪心、嘔吐、上腹部膨満感。
・転移
血行性ー肝臓・肺・脳などに転移しやすい。
リンパ行性ーウイルヒョウー転移(左鎖骨上リンパ節)
播種性ーシュニッツラー転移、ダグラス窩転移、クルーケンベルグ腫脹(卵巣転移)
・治療は内視鏡的胃粘膜切除術、腹腔鏡下手術、胃全摘術の再建法、治癒切除。
・外科手術
幽門部胃切除術
分門部側胃切除術
胃空腸バイパス術
胃全摘術
胃切除後再建法
・移設後の合併症に輸入脚症候群がある。
・輸入脚症候群の治療ではブラウン吻合を行う。
・胃切除後再建法にビルロートⅠ・Ⅱ法、RーY法がある。
・術後の合併症に縫合不全・術後出血・ダンピング症候群がある。
・胃切除後の縫合不全は術後1週間前後に起こる。
・術後出血で血圧低下がみられれば緊急再開腹止血術を行う。
・ダンピング症候群が現れた場合には、保存的に経過を観察する。
・胃全摘術後、鉄欠乏性貧血を起こすことがある。(鉄・ビタミンB12吸収障害)
3)小腸
①クローン病
・原因は不明で10歳代後半~20歳代に多い。
・口から肛門部まですべての部位がおかされれ炎症や潰瘍がおこる。
・非連続性病変。
・初期には回盲部に好発する。
・薬物治療ではステロイド薬・免疫抑制剤などが用いられ、食事療法では成分栄養療法を行う。
・狭窄や穿孔を起こすと手術が行われる。
・手術はできるだけ腸管を温存するために小範囲切除や狭窄形成術が行われる。
・再燃・再発を繰り返し慢性の経過をとり、完全な治癒は困難である。
②虫垂炎
・10~20歳代前半に好発
・急性虫垂炎では痛みが心窩部痛から右下腹部痛へ移行する。
・虫垂の化膿性炎症
・診断はCRP上昇、マックバーニー圧痛点、ランツ圧痛点、ブルンベルグ徴候などがある。
・治療は保存的療法と手術。
4)大腸
①大腸ポリープ
・大腸ポリープとは大腸良性腫瘍のこと。
・腺管腺腫で、2cmをこえるとがんの合併率が高くなる。
・炎症性ポリープは潰瘍性大腸炎やクローン病などでみられる。
・家族性大腸腺腫症(家族性大腸ポリポーシス)
常染色体優性遺伝。
20歳を過ぎると、がん化頻度が急増。
②大腸癌
・40歳以上に好発、近年増加傾向にある。
・組織学的には腺癌が多く、内側の粘膜から発生する。
・好発部位は直腸・S状結腸が多い。
・自覚症状は下痢や便秘、腹部膨満感、しぶり腹など。
・診断では便潜血反応、直腸指診、注腸造影(アップルコア・サイン)、大腸内視鏡、腫瘍マーカーなど。
・腫瘍マーカーはCEA、CA19-9などが異常高値となる。
・治療の中心はがんを取り除く外科的治療であり、これに加え化学療法や放射線療法などの補助療法を行う。
・外科手術
大腸がんの手術には、腹腔鏡補助下大腸切除術・ 経肛門的切除 ・開腹手術(大腸切除術)などがある。
大腸切除術
回盲部切除術
右半結腸切除術
横行結腸切除術
左半結腸切除術
S状結腸切除術
前方切除術
直腸切除術
③潰瘍性大腸炎
・原因は不明で10~20歳に多い。
・粘膜・粘膜下層をおかし寛解と増悪を繰り返す。
・直腸に初発。びまん性・連続的に全大腸に進展する。
・全大腸炎型や10年以上の長期例では大腸がんの発生頻度が高い。
・粘膜面に多発性の潰瘍や浮腫、出血を伴う。
・診断
注腸造影でハウストラの消失、狭窄がみられる。
大腸ファイバーで潰瘍、びらん、出血などがみられる。
・治療はまず内科治療を行い、コントロール難な出血や狭窄は外科手術で治療する。
5)肛門疾患
①人工肛門形成術
・原因疾患は、大腸がん、直腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病、ガードナー症候群、鎖肛など。
・肛門機能を温存できない場合、腹会陰式直腹切断術(マイルズ手術)を行い、人工肛門造設をする。
・人工肛門造設部位決定の原則にクリーブランドクリニックの基準がある。
1)臍部より低い位置
2)腹部脂肪層の頂点(マウンテントップ)
3)腹直筋を貫く位置
4)皮膚のくぼみ、しわ、瘢痕等を避けた位置
5)患者自身が見ることができる位置(セルフケア)
②痔核
・上・下直腸静脈瘤が静脈瘤ができる。
・分類
内痔核ー歯状線より口側にでき、出血や脱水を起こす。(疼痛は少ない)
外痔核ー歯状線より肛門側にでき、疼痛がある。(イボ痔)
・治療は生活指導や排便コントロール、座薬、内服、皮膚の清潔を保つなどから始める。
・外科的治療を行う場合は痔核切除術や硬化療法を行う。
③痔瘻
・肛門陰窩に膿瘍、瘻孔を形成する。
・症状は有痛性腫脹、膿性分泌物。
・診断は肛門周囲に2次孔の確認。
・治療は瘻孔切除を行う。
6)胆道系
①胆石症
・4F:中年、女性、小太り、全身状態良好な人に好発する。
・症状は疝痛発作、右希肋部痛、右肩への放散痛、心窩部痛、発熱、黄疸など。
・コレステロール胆石が約70%、ビリルビン胆石が約30%
・胆石症の約80%が胆嚢動脈にできる。
・胆嚢結石が約80%と最も多く、胆管結石は約20%で黄疸が出やすい、肝内結石は少ない。
・診断はエコー、CTを行う。
・治療は内視鏡手術を行う。(腹腔鏡下胆嚢摘出術)
②急性胆嚢炎
・約90~95%に胆嚢結石を合併。
・診断はエコー、CTを行う。
・治療は保存的治療を行ってから外科的治療を行う。(胆嚢摘出術など)
③慢性胆嚢炎
・急性期炎症の有無に関わらず、胆嚢壁の肥厚などを呈する。
④胆管炎
・急性閉塞性化膿性胆管炎
・原因は総胆管結石や胆管腫瘍などによる。
・シャルコーの3主徴がみられる。症状は間欠性発熱、上部腹痛、黄疸。
・レイノルズの5主徴とはシャルコーの3主徴+低血圧、意識障害。
・治療は胆道減圧(PTCD)を行い、抗生剤投与などの内科的治療を行う。
⑤胆嚢がん
・60歳以上の女性に多い。
・胆石の合併症(約70%以上)
・周囲臓器に直接浸潤やリンパ節、肝臓転移が多い。
・早期がんは無症状が多い。
・診断は腫瘍マーカー、エコー、CTなどを行う。
・腫瘍マーカーはCEA、CA19-9などが異常高値となる。
・治療は胆嚢摘出術+リンパ節郭清などを行う。
・化学療法の効果が期待できない。
⑥胆管がん
・50~60歳以上の男性に多い。
・症状は閉塞性黄疸など。
・診断はエコー、CT、MRI、ERCP、PTCDなどを行う。
・治療は胆嚢摘出術+リンパ節郭清などを行う。
・化学療法の効果が期待できない。
7)肝臓
①肝癌
・肝臓には肝動脈と門脈といった2系統の血流が流入している。
・肝臓癌の95%以上は肝細胞癌。
・肝癌は、原発性肝癌と転移性肝癌に分けられる。
・移転性肝癌とは胃癌や大腸癌などの癌細胞が血液を介することで肝臓に移転してきたもの。
・40~65歳代の男性に多い。
・原発性肝臓癌の80%以上肝硬変を合併。(C型肝炎ウイルス・B肝炎ウイルスが関与)
・診断は腫瘍マーカー、エコー、CT、MRI、血管造影など。
・腫瘍マーカーではAFP、PIVKA-Ⅱが異常高値となる。
・移転性肝がんは治療が難しく命に関わることがある。
・治療は原発巣を根治し、他に転移が認められない場合に肝切除術を行う。
・正常な肝臓は約80%まで切除可能である。
②黄疸
・通常のビリルビン値は1.0~2.0mg/dl。
・黄疸が見られる時は2.0~3.0mg/dl。
・黄疸には肝前性黄疸(溶血性黄疸)・肝性黄疸・肝後性黄疸(閉塞性黄疸)がある。
・外科で多く見られるのは肝後性黄疸(閉塞性黄疸)。
8)膵臓
①急性膵炎
・膵酵素により膵臓自体を自己消化し、炎症を起こす。
・急性膵炎は男性に多い。男性では40歳代、女性では60歳代に好発する。
・原因としてアルコールの多飲、総胆管結石、自己消化により膵炎をおこす。
・症状は激痛を訴え、上腹部や背部痛、嘔吐を伴い、ショックに陥る場合もある。
・重症膵炎ではカレン徴候やグレイ・ターナー徴候がみられる。
・診断はCT、エコーで膵臓腫大、膵周囲の滲出液の貯留を検査する。
・血液検査を行い膵臓に特異的な膵アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼなどの膵酵素を測定する。
・治療は内科的治療(保存療法)で効果が得られない場合に外科手術を行う。
・膵炎患者には低脂肪食を与える。
②慢性膵炎
・膵炎の症状が6ヶ月以上持続、組織学的に膵臓の繊維化、内外分泌組織の破壊・消失と膵管系の拡張・狭 窄をみとめられる。
・原因はアルコールの多飲、胆石膵炎(突発性膵炎)などである。
・慢性膵炎は男性に多い。
・症状は上腹部や食欲不振、悪心、下痢、糖尿病など。
・診断はCTで膵内石灰化、アメリカでは膵石エコーを行う。
・治療は内科的治療(保存療法)で疼痛発作が強い場合に外科的治療を行う。
・膵炎患者には低脂肪食を与える。
③膵がん
・膵頭部がん、膵体尾部がん、全体がんに分類する。
・膵がんのほとんどが膵頭部に発生。
・症状
膵頭部がんー閉塞性黄疸、上腹部痛、クールポアジェ徴候(胆嚢の腫れ)
膵体尾部がんー腹痛、体重減少、食欲不振
・診断は腫瘍マーカー、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)、CT、MRI、エコー。
・腫瘍マーカーではCA19ー9が上昇する。
・膵癌の予後は消化器癌のなかで最も不良である。
・治療は手術が最良の治療法である。
・根治治療
膵頭部がんー膵頭十二指腸切除術
膵体尾部がんー膵体尾部切除術
・手術療法に放射線治療,化学療法、免疫療法を手術に組み合わせて行う。
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